大江戸怪奇譚ひとつ灯せその2

●その他、思ったことをつれづれと。


●最初に清兵衛のそれまでの日常が壊れます。死に直面し、話の会に入ったことで、今度はそれまでの基準で言えば非日常的を身近に体験することになります。最初は話を聞くくらいなのですが、事件は徐々に近づいてきて、中盤から話の会のメンバーが怪しい存在に直面したり、事件を解決します。清兵衛もそういうことに慣れてくるんですね。

●途中で、ああこの調子で会のメンバーが事件にぶつかるパターンでシリーズ化すれば何巻も続きが書けるんじゃないか、と思いました。でもそうはいかないんですね。最後の章でもう一度ひっくりかえる。日常非日常はふたたび混ざり、清兵衛はまた1人に戻ってしまいます。

●中盤の事件は悪いことをすれば恨みを買う、天罰があるという因果応報の理屈で説明がつくように思えるのです。会のメンバーも一応そう納得してるようです。しかし最後にそれもあやしくなる。やはりそんな筋道が通ったものではないように思える。ここで序盤の小人の七福神のエピソードが効いてきます。怖い。理屈ではすくえない怖さが残る。

●死の恐怖をどう克服するか、どう対処するかという問題に対して「もう友人知人もあの世にいる方が多いから」という答えがあります。老人が至る境地といいますか、これはわりと見る答えであり、説得力もあるように思えます。ではこの小説でそれが通じるかどうか。通じるようにも思えるし、そうはいかないようにも思える。

●むしろこれだけわからないことだらけの出鱈目なこの世なんだから、怖がるだけ無駄、という気にもなりました。