「吾輩は猫である」と「坂の上の雲」

●俺の頭の中は雑然としていて、本人にも整理する気がありません。それでときどき世間では当たり前のことに驚くことになるんですが、夏目漱石の「吾輩は猫である」の日本はまさに日露戦争の真っ最中だってことに気がついて驚きました。

日露戦争をあつかった司馬遼太郎の「坂の上の雲」に正岡子規の友人として夏目漱石夏目金之助)が出てるのに、漱石の作品を別の時代のもののように思ってる方がどうかしてるんですけども。それくらい2つの作品の空気がつながりませんでした。

●「吾輩〜」は明治38年1月号の「ホトトギス」に第1回が掲載されました。子規はすでに死んでおり、ホトトギスの主宰は高浜虚子でした。で、その前年の明治37年12月が「坂の上〜」の前半の山場だった、旅順攻略なんですね。まさに時事ネタだったわけです。

●それがわかってから「吾輩〜」を見直すと日露戦争に触れた箇所が多い。なんで気がつかないのか。全部は無理ですが(というか、最初から最後まで読み通したことがない)、いくつか

P.210
 先達中から日本は露西亜大戦争をしているそうだ。吾輩は日本の猫だから無論日本贔負である。出来得べくんば混戦猫旅団を組織して露西亜兵を引っ掻いてやりたいと思う位である。


P.272
松には脂がある。この脂たる頗る執着心の強い者で、もし一たび、毛の先へくっ付けようものなら、雷が鳴ってもバルチック艦隊が全滅しても決して離れない。


P.312
敵といえども弾道のあまり遠過ぎるのを自覚せん事はないのだけれど、そこが軍略である。旅順の戦争にも海軍から間接射撃を行って偉大な功を奏したと云う話であれば、空地へころがり落つるボールといえども相当の効果を収め得ぬ事はない。


新潮文庫吾輩は猫である」96刷)

NHKが「坂の上の雲」をドラマにすると聞きました。その配役は、
秋山真之本木雅弘
秋山好古阿部寛
正岡子規香川照之
夏目漱石小澤征悦

本木雅弘阿部寛も好きな俳優なのでたいへんけっこうなんですが、秋山兄弟が阿部本木では年齢が離れすぎではないかと思いました。ところが阿部寛(1964年)、本木雅弘(1965年)であってるんですね。俺は阿部寛をそうとう若く、本木雅弘をかなりのベテランだと思っていたようです。