ぼおるぺん古事記(三)海の巻

こうの史代の「ぼおるぺん古事記(一)」の話をいつ書いたんだっけと探したら1年以上前でめまいがしました。五月女ケイ子の「レッツ!!古事記」なんて5年前でしたよ。

●(三)が出たのはけっこう前なんですが今さら買ったのは、そういえばサルタヒコとアメノウズメの対決をこうの史代はどう描いたんだろう、というのが気になったから。さあ天孫降臨だってときに天の分かれ道に天と地を照らす怪人物(神)がいてびびったアマテラスがあんたなら勝てるから、とアメノウズメを送り出した場面があります。そのときにあんたは“面勝つ神”だから、と言われてるんですね。サルタヒコは天狗の元祖じゃないかと言われるインパクトフェイスなわけですが、それに勝てるだろと言われる女神はどんな顔してたのか。

●しかし考えてみればもっと有名な天岩戸の場面でアメノウズメは登場してるはずで、(一)を見れば解決したのについ(二)と(三)を買ってしまいました。以前の俺ならスキャンしてレッツ!!とぼおるぺんのアメノウズメの顔の画像を並べたでしょうが、もうしません。他の人も買ってください。

●天岩戸で思い出しましたが、養老孟司が女の力について書いたエッセイで、天岩戸を閉めるのも開けるのもアマテラス1人がやったと指摘してて、今回ついでにぼおるぺんに載ってる原文をあたったらそのとおりでした。引きこもるのはもちろんアマテラス1人でやったのですが、引っ張り出すときも、アマテラスが岩戸を少し開けて外を覗いたときに待ちかまえていたタヂカラオ(手力男)が“取其御手引出”、手を取って引っ張り出したわけで、なんとなくタヂカラオが隙間に手を突っ込んで岩戸を開けたと思ってたのはまちがいでした。

●あと原文といえば、オオクニヌシに娘をとられて追いかけてきたスサノオが「おまえは国主になるがいい!」と叫ぶ場面。この台詞の最後に“是奴”という言葉が入っててレッツだと「こやつめ!」と訳されてました。古代の人はどういう必要を感じてこの単語を入れたのか。面白いです。ぼおるぺんだとこの後、根の国に引き帰していくスサノオの哀愁漂う後姿が描かれてます。

ぼおるぺん古事記を見てるとこうの史代スサノオを特に愛してる気がします。それとオオクニヌシスサノオは(二)では娘をオオクニヌシに奪われる男やもめ風な父親として登場します。で、居間にもベッドの横にも奥さんの写真らしきものが飾ってあるんですね。著者の愛情を感じました。もっともスサノオには奥さんが2人かそれ以上いたっぽいので、誰の写真かは微妙なところですが。
 
 

ぼおるぺん古事記 三: 海の巻

ぼおるぺん古事記 三: 海の巻

 
 
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