ヒョルト人の戦争

●続けて「Sartar Rising part2 Orlanth is Dead!」からヒョルト人の戦争の風景を。

●その前に民兵(fyrd)の話。民兵は専業の戦士以外の戦える男たち(そして一部の女たち)を動員した集団です。基本的に氏族のトゥーラ(氏族の領土)を守るために動員されますが、必要があれば戦の群に加わって遠征することもあります。もちろんその間のトゥーラの守りが手薄になるので頻繁におこなわれることではありません。

●戦士や民兵の動員は「ヴィングコットの召集(Vingkot's Muster)」の伝統にのっとっておこなわれます。

●第一防衛段階というべき「黒い矢(Black Arrow)」は氏族長が戦士と戦いの近侍(fighting thane)を集めるものです。氏族を守ることは族長の日常の仕事に含まれており、この召集は族長の権限でいつでもできます。

●戦士だけでは不足という事態になっても、族長の決定だけで民兵を召集することはできません。決定権は氏族の輪と呼ばれる族長が指名した指導者集団が持ちます。戦争も氏族全体を巻き込むものなので、その決定は氏族の輪がおこないます。

●氏族の輪が戦うことに同意すると、4つの松明が灯され、各ステッド(トゥーラ内の集落)に送られます。召集されるのは武器をとって戦える男たちで、農夫、工芸家、漁夫、狩人、牧夫、それに癒し手が加わります。当然戦士も含まれますが、ランカー・マイやバーンターなどの信者は含まれないかもしれません。

●4つの松明は魔術によって敵のエレメントである青、黄、黒、赤の4つの色に燃えます。この召集は魔術なので、松明は族長のリーダーシップを強化し、召集を無視することを難しくします。無視したとしても、意識せざるをえなくなります。松明を運ぶものはそれぞれのステッドに集合場所を伝えて行きます。
召集を無視した場合などの罰則もあります。
ヒョルト人の罰金 - そっちはそっちの気晴らし、こっちはこっちの気晴らし


●人々が集まると族長はヴィングコットの召集をおこないます。獰猛な動物にルーンを描いて供犠し、戦の群への加護と防備のないトゥーラの平和を祈ります。参列したものは「戦近侍(warthane)」の命令に従うことを誓い、儀式は彼らを戦の群へと変えます。この儀式によって後に残る氏族のメンバーは、トゥーラを離れて戦う戦の群のワイター(守護霊のようなもの)を支援することができるようになります。

●ここからちょっと生臭くなるのですが、政治が関わってきます。氏族の戦近侍は自身の戦の群を率います。各氏族の戦の群は進軍し戦うのですが、友好的な氏族とかたまったり、敵対的な氏族から離れたりします。同じ氏族内でいさかいが発生したら、その解決の責任は彼らを率いている戦近侍にあります。戦近侍は自分が率いている男たちの配置も決めなければなりません。

●部族全体が召集される大規模な戦争の場合、全体を統括するのは「戦長(War chieftain)」です。彼は無数の小さな不和や古い権利についての議論、侮蔑行為によるいさかいを解決しなければなりません。氏族によってはある氏族の隣に立つのを拒み、他の氏族は戦場の特定の土地への権利を主張するかもしれません。

●さらに規模が大きく、複数の部族の軍が合流していれば、それを率いる長(戦王(War King)と呼ばれることもある)は部族間の議論や戦場での配置などを解決しなければなりません。

●まだ小さい勢力だったジンギス汗がもっぱらこういう裁きで苦労してた小説を思い出します。強いだけでは勝てないんですね。