ヒョルト人のカルト:ユールマルその2
ただし、ほぼ完全な幸福がしばしば髪ぼうぼうの道化に似たものであり、すくなくとも少々の狂気と、多少の髑髏の影をおびていることを理解した上でだ。
「豊穣世界」より R・A・ラファティ著 『つぎの岩につづく』収録
いつかかっこいい引用から入ってみたいと思ってました。
●ユールマルの力の本質は、力を上手く働かせないということのようです。起こるはずのことが起こらない、起こらないはずのことが起こる。この力は善悪や敵味方を選ばず、ユールマル自身に対しても働きます。例えば死もそうです。ユールマルは死の力を支配しているわけではありませんが、死に支配されてもいません。グローランサでは死も力の1つであり、意外に強いユールマルの無秩序に対してはまともに働かないことの方が多いようです。ユールマルは何も恐れる必要がなく、あらゆるものが彼にとってはおもちゃみたいなものかもしれません。
●定められた役割を果たしているトリックスターはヒョルト人社会でも許容されると書きました。それではどんな役割があるのか。なお、あげられていたのはある程度有名な例で、実際にはもっといろんなのがいるそうです。なにせ無秩序なので。
- 死の目、死を見つけるもの(Deadeye, Death-Finder)
- ダウンボーイ、光持ち帰りし者(Downboy, Lightbringer)
- 彼の落ち度、身代わり(Hisfault, Scapegoat)
- 共同体の失敗、過ち、不幸、ふりかかった神の怒りなどを全部ユールマルに押し付ける儀式、というかお祭りです。それらのものを魔法の袋に詰める儀式を行い、その袋をトリックスターに持たせ、みんなで彼の名前を叫びながら棒で叩いてステッド(集落)から追い出します。日本にもそういう祭りはありそうです。このようにユールマルを役立たせる方法を思いついたのは、もちろんアーナールダです。