ゴンドールの執政
●指輪物語のガンダルフの台詞に昔からわからないものがあって、引用すると
しかし現存する世界で危殆に瀕している一切の価値あるもの、これこそ、わしの関心事です。そしてわしとしては、たとえゴンドールが滅びようと、なおも美しく育つもの、また未来にふたたび実をつけ、花を咲かすことのできるものがこの夜の時を通りすごせば、わが任務に完敗したことにはなりませんぞ。なぜならかく申すわしもまた執政ですからな。
ゴンドールの執政のデネソールに言った台詞ですね。最後の“わしもまた執政ですからな”の部分がわからず、ガンダルフを中つ国に派遣したヴァラールたちの代理として働いているのだ、という意味で受け取ってました。
●デネソールの wikipedia の項目を見ると執政の元の言葉は steward らしいです。日本だと女性版のスチュワーデスの方が有名ですが、辞書で引いたら執事、家令、管理人などの固い意味のほかに、世話役や乗客係程度の意味も載ってました。デネソールがゴンドールの執政官としての steward を強調したのに対して、ガンダルフはもっと広い意味での steward を主張したんですね。同じ言葉なんですが、日本では両方の意味を含めたいい訳語がなくて執政という固い言葉になってしまったのか。まあ原書を読んだことがないんで適当に言ってますが。
●というようなことを考えたのはひさしぶりに指輪物語を読んでて以下のようなガンダルフの台詞を読んだから。
あの物音からおして、扉の外には石が積まれ、二本の柊は根こぎにされて扉にさしわたされたのではないかと思う。残念なことじゃ、二本とも美しい木で、長いこと立っておったのに。
モリアに入った直後の台詞で、そうかガンダルフは人間やらエルフやらの知性のある生物だけでなく、さらに動物だけでなく、木々やその他のものたちのことも気にかけてることがこんな最初の頃から描写されていたんだなと。今さら気づくのも遅いな。
- 作者: J.R.R.トールキン,J.R.R. Tolkien,瀬田貞二,田中明子
- 出版社/メーカー: 評論社
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