辺見庸

●昨日、NHK教育テレビでやっていたETV特集「作家・辺見庸 しのびよる破局のなかで」に見入ってしまいました。誰が言っているかではなく、何を言っているかで判断するのが正しいとは思うのですが、俺は辺見庸が言ってるなら聞いてしまいます。

辺見庸を知ったのは西原理恵子神足裕司の共著「恨ミシュラン」で、サイバラの漫画でこう表現されてました。

私はモノをかいている人や、バクチをやってるおっさんでこうゆうふうな人を見たことがある。どっかがキレたかんじのこわい人

その後、辺見が全裸でカラオケしてる絵があって「へんみようはアホタレじゃ」ということになるのですが。

●1度脳内出血で倒れたということでしたが、昔のイメージのままの怖い顔をしてました。驚くのは作家の嗅覚で、

私はある予兆を感じるともなく感じている。未来永劫不変とも思われた日本の飽食状況に浮かんでは消える、灰色の、まだ曖昧で小さな影。おれが、いつか遠い先に、ひょっとしたら「飢渇」という、不吉な輪郭を取って黒ずみ広がっていくかもしれない予兆だ。たらふく食えたのが、食えなくなる逆説、しっぺ返し。いま、そのかすかな気配はないだろうか。途方もない悲観にすぎないかどうか。確かめようもなく、ただ曖昧な灰色の影を胸に帯びて、私はこの国をあとにする。

1992年末に書いた文章として「もの食う人びと」に載っています。今、俺らにも見えてきた光景を17年前に察知してたわけです。昨日の番組の内容はまさにその延長上にありました。

●世界がどこまで転落するのか、転落していないふりをし続けるのか見たい、というようなことを言っていて、やっぱりこの人は強いなと思いました。俺はなるべく目をつぶっていたい。その強さをなんとか自分のものにできないかと考えたこともあるのですが。サイバラも強いなぁ。
 

もの食う人びと (角川文庫)

もの食う人びと (角川文庫)

恨ミシュラン (上) (朝日文庫)

恨ミシュラン (上) (朝日文庫)

恨ミシュラン (下) (朝日文庫)

恨ミシュラン (下) (朝日文庫)