モルダウ

●最近のNHKみんなのうたで「モルダウ」が流れてます。シンガーソングライターのイルカが歌詞をつけてました。正確には「いつか見る虹〜“モルダウ”から〜」というタイトルです。

●俺はたしか「ボヘミアの川よモルダウよ♪」で習った部分が「悲しいだけでは泣きません♪」になってました。それですごいことするなぁ、と思ってたんですが、日本語の歌詞がいっぱいあるんですってね、モルダウ。ネットで拾っただけでも「ボヘミヤ平野を永久(とわ)に♪」「なつかしき河よモルダウの♪」などがあります。変わったのではさだまさしの「せつないことがあったなら♪」というのもあるらしいです。

●それで少し複雑に思うのは、モルダウチェコスロバキアの民族と深く結びついていると聞いたからです。モルダウはドイツ語読みだそうで、チェコ語では「ヴルタヴァ」なんだとか。そしてチェコスロバキアはドイツやソ連などで苦労してます。モルダウスメタナの「我が祖国」という一連の交響詩の6曲のうちの1曲です。

●1968年のプラハの春と呼ばれる政治事件では、ソ連軍が侵攻した日、チェコスロバキアの国営放送はモルダウだけを流し続けたそうです。また指揮者岩城宏之のエッセイには、ソ連軍侵攻の翌年の「プラハの春」の開幕音楽会に参加したときのことが書かれています。

●このときのプログラムは「我が祖国」全曲でした。最初に国歌が演奏され国旗が掲揚されました。これがソ連軍の侵攻後、初めて国旗の掲揚を許された瞬間だったそうです。会場から拍手が起こり、涙をぬぐう人も多かったとか。

●これだけでもけっこう重い話です。外国人である日本人に歌詞がつけられるのかどうか。またチェコスロバキアの民族問題も、実際はもうちょっとややこしいようです。