クトゥルフの呼び声

●以前「クトゥルフの呼び声TRPGをやったときに、危険を冒して正気度を失っているのに、それが全然メリットにつながらないのが納得いかん、と言われて新鮮でした。言ったのはクトゥルフ経験の無い人で、俺はそんな風に考えたこともありませんでした。たしかに正気度が低くなった分、判定の成功率が上がるなんてことはない。だいたい危険を冒す理由はそういうゲームだから、というお約束だからなので。

●その辺は個人の嗜好なので、無理にやる必要もないです。本題はクトゥルフと言ったときに「ああ、あの拾った手帳に“窓に! 窓に!”って書いてあるやつね」という反応があったことです。それと「遺産でもらった館には気をつけないとダメなやつね」というのもあった。クトゥルフ好きとして、その反応はわかってないと言いたい。

●手元にある青心社の単行本「クトゥルー」1、3、4、5、7、8、9巻で確認します(海外のクトゥルフ関連小説を集めたシリーズ。現在は13巻刊行)。こういう企画を以前、ネットで見たような気がするんですが…。収録作品を「報告型」「体験談型」「手記型」「小説型」の4つに分類します。報告型というのは語り手自身は変な体験はしていないけれども、事件を調査した結果をまとめた報告書型です。体験型は文字どおり。手記型が問題の襲われながら実況してるやつ。○○で見つかった手記、などと冒頭に書かれているもの。小説型は神の視点と言いますか、すべての登場人物から等距離で書かれたもの。

●この7冊の収録小説は全部で59編、そのうち、

報告型8編
体験談型38編
手記型2編
小説型11編
手記型は2編しかない。ただし報告型の中に1編、途中で実況型のメモが入るのがあった。

●手記(実況)型の何が笑いを誘うかと言うと、怪物に襲われてるのに書いてる場合か、という突っ込みです。わずか2編(3編)しかない手記型なのにこんなに印象に残ってしまうのは、1巻にいきなり2つ収録されているからではないかと思います。

●体験談型でもホームズとワトソン型というのがあります。語り手はワトソン(素人)のポジションで、ホームズ(禁断の知識を持ってる)のポジションの人間が調子に乗って失敗するのを見てる、という型です。体験談型だと語り手を破滅させるのが難しいんですね。実況になってしまう。

●それと遺産/遺言でえらい目に遭うのは59編のうち、8編でした。こっちはちょっと確率が高いです。遺産には注意。


[追加]
創元推理文庫の「ラヴクラフト全集」の方にはラヴクラフト自身が書いた、思いっきり実況しちゃってるのが1編あるらしいです…。